Medical 【医療】



 御用達という言葉にはなじまないものの、我々と同様に皇室の方々も使用するサービスに関して少しページを割いておきます。


 ここでは医療について述べましょう。

 宮内庁には宮内庁病院があります。原則的には皇族の方の医療はここで行われると見ていいでしょう。  医師や看護婦などを合わせた職員の数は約50人という小さな病院ですが、すべての科を備えた総合病院でもあります。病院長は侍医長が兼務。
 侍医団のトップである歴代の侍医長(戦前は侍医頭)の名前を知りうる限りあげておきましょう。

一等侍医   伊東方成
侍医局長   池田謙斎
侍医頭    岡玄卿
侍医頭    池辺棟三郎
侍医頭    入沢達吉
侍医頭    樫村正徳
侍医頭    八田善之進
侍医長    村上浩一
侍医長    西野重孝
侍医長    星川光正
侍医長    高木顕
侍医長    池永達也
皇室医務主管 池永達也   侍医長 森憲二
皇室医務主管 金沢一郎   侍医長 中村雄二

 侍医たちのほかにも、外部から宮内省御用掛(戦後は宮内庁参与)としてその分野の最高権威が診療にあたります。

 近代日本の内科学を確立したといわれるのは青山胤道、三浦謹之助、入沢達吉の三人ですが、このうち、青山胤道は明治天皇の事実上の主治医とされていましたし、三浦謹之助も皇太子の渡欧に随行するなど皇室とのかかわりは深い方でした。そして最後の入沢氏は上にあるとおり、東大退官後に侍医頭を務めていますから、その全員が関わったことになるわけです。

 御用掛には、変わったところでは、明治期のお雇い外国人のベルツ博士や、俳句の水原秋櫻子などもいたようです。また初期のころには、江戸幕府の奥医師だった浅田宗伯のような漢方の巨頭も、西洋医学の徒に混じって侍医に加わっていました。(あの浅田飴も実はこの名医の処方になるものです)

 日本における内科と外科の最高峰とされる東大の第三内科と第一外科の教授は、共に代々宮内省御用掛(戦後は宮内庁参与)だそうで、下にその歴代の教授をあげておきましょう。

東大第三内科
1 青山胤道(東大医学部長 東大付属病院長 日本医学会会頭)
2 稲田龍吉(日本医師会会長)
3 坂口康哉(東大医学部長 東大付属病院長 国立東京第一病院院長)
4 沖中重雄(日本医学会会頭 虎ノ門病院院長)
5 中尾喜久(日本医学会会頭)
6 小坂樹徳(虎ノ門病院院長)
7 高久史麿(東大医学部長 日本医学会会頭 国際医療センター総長)
8 矢崎義雄(東大医学部長 日本医学会会頭 国際医療センター総長)
9 永井良三(東大付属病院長)

東大第一外科
1 宇野朗
2 近藤次繁(東大付属病院長)
3 青山徹三
4 大槻菊雄
5 清水健太郎
6 石川浩一
7 草間悟
8 森岡恭彦(東大付属病院長)
9 武藤徹一郎(東大付属病院長)

 大正天皇崩御の折の侍医頭の日記を読んだことがありますが、その医療体制は今から思えばたいへんなもので、侍医頭の入沢達吉(東大第二内科教授・同医学部長・同付属病院長を歴任し日本医学会会頭)以下の内部スタッフに加え、  外部から三浦謹之助(東大第一内科教授・同付属病院長を歴任。文化勲章受賞、三菱財閥の岩崎家の主治医としても著名)、稲田龍吉(東大第三内科教授。日本医師会会長・日本医療団総裁を歴任。文化勲章。学士院恩賜賞。ノーベル賞候補)、平井政遒(陸軍軍医総監、日本赤十字社総裁を歴任)といった「御用掛」が加わっています。
 こういう日本を代表する名医の面々が、連夜ほとんど雑魚寝に近い状態で泊り込み看病してる様子は、欽定憲法の時代ならでは。
 日記によれば、大正時代にすでに宮内庁病院にレントゲンがあったようで、こちらも驚きです。


 昔から天皇陛下のお体にメスを入れるのは東大の第一外科の教授というイメージが強かったんですが、たしか昭和天皇の晩年の手術を担当されたのは森岡恭彦氏、かなり前に現天皇陛下の手術をされたのは武藤徹一郎氏だったと記憶しています。
 ただ、一番最近のがん手術の執刀は、垣添国立がんセンター総長と東大の泌尿器科の教授でした。
 このときは天皇陛下が宮内庁病院ではなく、皇居を出られて東大付属病院に入院されたことも話題になりました。
 長い伝統も変わりつつあるようです。
 といっても、一般人がいくらお金を積んでも受けれないような医療を受けられてるのは今も昔も変わりないようです。

 医師の側もこういう方々を診るのは苦労も多いようで、雅子妃殿下の御懐妊が遅れたことで坂元正一氏(東大産婦人科教授)に対する非難は少なくありませんでしたし、逆にその後を担当した、坂元氏の弟子に当たる堤治教授には多くの賛辞が寄せられ、不妊問題のヒーローのようになってしまいました。  それでこういう本も書いておられます。(堤治著「授かる 不妊治療と子どもをもつこと」)

   ちなみに、先年皇室医務主管に就任した金沢一郎氏(東大教授・同付属病院院長・国立精神神経センター所長)は神経内科の権威で、美智子皇后陛下がお言葉をなくされた時その診療に当たられ、ご回復に功あった方だとか。









 さて、紀子様が  愛育病院  に入院されたことが話題になっています。
 山王病院や聖路加国際病院と並んで、産婦人科ではよく知られた病院です。
 宮内庁病院ではなく外部の病院に入院されるのは異例だそうですが、過去には高円宮妃殿下もこちらで御出産されていたとの事です。
 ご懐妊・ご出産に関して主治医を務められている中林正雄氏が、こちらの院長を務めておられることから決まったそうです。

 また現在雅子妃殿下の治療を担当されているのは慶応大学教授の大野裕氏(認知療法)ですが、この方はオランダ滞在にも同行されるそうですね。




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